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本土へ、怒り抱く沖縄の目

2017年09月24日

 近未来、日本と中国の間に勃発した武力衝突は、沖縄での凄惨(せいさん)な地上戦を経て、日本の勝利に終わった。琉球義勇軍としてこの戦いに参加した沖縄の青年・渋谷賢雄は、戦勝に浮かれる東京で、かつての戦友と再会。怪しげな仕事を紹介される。だが、直後に彼が殺害されたことで、賢雄は原発テロ計画を巡る国際謀略戦に巻き込まれていく。
 国際謀略アクション小説『カミカゼの邦(くに)』の作家、神野オキナはライトノベル作家として15年以上のキャリアを持つベテランだ。猫耳宇宙人たちとのSFラブコメ『あそびにいくヨ!』(MF文庫J・全20巻。10年にアニメ化)から、戦場での青春を描く『シックス・ボルト』(電撃文庫・全3巻)まで、その作風は多岐にわたるが、そんな著者の描きおろし一般文芸への挑戦作となる本書は、これまでになくハードな内容だ。
 物語は、義勇兵部隊が、中国軍のミサイル巡洋艦に自殺行為じみた突撃を仕掛けるところから始まるが、本書に登場するのはそんな過酷な戦場で己の本性に気づき、戦後の平和になじめなくなってしまった者たちばかり。ある者は殺人に快楽を見いだし、ある者は肉欲に身を任せる。そんないわくつきの人物たちを、かつての仲間たちが新たな危機に再集結という王道のプロットに乗せ、銃弾もお色気も山盛りの社会派エンターテインメントに仕上げている。
 中でも、本書に独自の視点を与えているのが、主人公・賢雄の造形だろう。彼の胸には、再び沖縄を地上戦に巻き込み、自分たちは無傷なままに戦勝に浸り、手のひらを返して沖縄県民を愛国者と褒めたたえる「本土」への怒りがある。一方で彼は、沖縄は本土なしには成り立たないとも考えており、矛盾する思いを抱いたまま、テロとの戦いに身を投じていく。
 神野オキナは前述した『あそびにいくヨ!』をはじめ、長年、沖縄を舞台にした作品を手がけてきた沖縄在住の作家だ。日本の内側でもなく、完全に外側でもない、という視点は、そんな著者だからこそ書けたものだろう。多彩な作風をもつエンターテイナーであり、同時に沖縄を描き続けてきた著者の、新たな代表作。ぜひ、多くの人の手に届いてほしい。(ライター・前島賢)

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