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「アフター・ビットコイン」書評 デジタルの先に見える金融の未来

アフター・ビットコイン―仮想通貨とブロックチェーンの次なる覇者 [著]中島真志

 仮想通貨「ビットコイン」は年初から20倍以上に高騰。興味をもつ向きも少なくないだろう。だが、本書はバブルを疑い、目を向けるべきはビットコインではなく、その中核技術「ブロックチェーン」だと指摘する。
 著者は日本銀行出身の研究者。今後、世界に広がるだろうデジタル通貨の技術とその可能性を「影の部分」も含めて解説した。ビットコインについては、本書の4割を割いているが、評価は辛口だ。そのほとんどの取引が中国で行われ、1%の人が9割を保有している。また、国際決済銀行(BIS)も「本源的価値はゼロ」と断言。将来性は厳しいと記している。
 一方、あらゆる取引記録を残し、分散して保有する仕組み=ブロックチェーンという技術への評価は高い。改ざんが難しく、低コスト。流通、不動産、医療などの非金融分野でも活用される可能性があるという。実際、各国の中央銀行は実証実験に踏み出してもいる。そもそもデジタル通貨の研究は、1990年ごろから日銀で進められていたとの秘密も明かされる。
 発展途上ではあるが、この道の向こうに金融の未来があることは、丁寧な解説からひしひしと伝わってくる。=朝日新聞2017年12月17日掲載