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「おかげさまで、注文の多い笹餅屋です」 91歳、誰もがあこがれる仕事人生

おかげさまで、注文の多い笹餅屋です [著]桑田ミサオ

 1袋2個入り150円で売る笹餅(ささもち)が大評判の桑田ミサオさん。保育所の用務員を60歳で定年退職した後に、笹餅作りを本格化して、75歳で起業。91歳になった今も夜中まで仕事場に立ち、なんと年間5万個もの笹餅を作り続ける。
 そんな「津軽の名物おばあちゃん」が語る本書は大きな活字で、カラーページには小豆の煮方やこしあんの作り方が。ほっこりした生き方本の体裁ながら、中身は先端ビジネスのヒントが満載だ。
 たとえば「私ひとりの小さな商い」は“マイクロビジネス”。添加物を使わず、笹を色よく、お餅を柔らかく、という研究心は“リサーチ&ディベロップメント”。頼まれれば誰にもお餅作りを教える姿勢は“オープンイノベーション”。老人ホームにお餅を持っていき、代わりにもらった古セーターの毛糸で帽子を作って、また持っていく、は“シェアエコノミー”。
 もちろんミサオさんは、そんなことを売り物にしているのではなく、ただ自然に逆らわず、昔ながらの日々を誠実に生きているだけ。
 21世紀の進化型か、あるいは前近代への回帰か、論はさておき、100歳社会が言われる今、誰もがあこがれる仕事人生がここにあるのだ。=朝日新聞2018年3月4日掲載