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「宇宙ビジネスの衝撃」書評 「地球のビッグデータ」求める最前線

宇宙ビジネスの衝撃 21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ [著]大貫美鈴

 この10年ほどで民間企業の宇宙開発が加速してきた。特に目立つのが、電気自動車テスラで有名なイーロン・マスク氏が創業した「スペースX」。他にアマゾン経営者のジェフ・ベゾス氏やグーグル、フェイスブックなども宇宙ビジネスに巨額投資している。
 本書は彼ら「ITの巨人がなぜ今、宇宙を目指すのか?」という視点から、宇宙ビジネスの最前線を紹介する。著者は同分野のコンサルタント。
 世界的に宇宙産業の市場規模は2005年の17兆円から、16年には33兆円に拡大。ベンチャーへの投資額も、15年には約2500億円と前年の5倍に急増した。特にIT関連の資金が流れている理由は、宇宙をインターネットの延長とみなし、そこから地球のビッグデータを得るため。
 たとえば低軌道に多数の小型衛星を打ち上げ、様々な地球観測データを取得。これを農・漁業の効率化や金融・保険分野の予測サービスに活用。
 その先には宇宙旅行や火星移住など壮大な事業計画も控えるが、今や単なる夢物語ではない。スペースXは火星を目指す宇宙船開発に300億円以上を投入済みと言われる。政府でなく民間企業がこれを進めることに「今の時代を感じます」と著者は述べる。=朝日新聞2018年6月2日掲載