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李龍徳「死にたくなったら電話して」書評 虚無へと引きずり込む性愛の蟻地獄

評者: 朝日新聞読書面 / 朝⽇新聞掲載:2014年12月14日
死にたくなったら電話して 著者:李 龍徳 出版社:河出書房新社 ジャンル:小説・文学

ISBN: 9784309023366
発売⽇: 2014/11/21
サイズ: 20cm/249p

死にたくなったら電話して [著]李龍徳

 「チラシのモデル程度」に整った容姿の3浪のフリーター徳山久志は、職場仲間に誘われて行った大阪・十三(じゅうそう)のキャバクラで「淀川区一の美人」に「死にたくなったら電話してください」の走り書き入りの名刺を握らされる。パッとしない日々に倦(う)んでいた男はいぶかしい思いを抱きつつ、女にのめり込んでいく。だが、待っていたのは、世界への呪いと憎しみが渦をなし、虚無へと引きずり込む性愛の蟻(あり)地獄だった。
 今年の「文芸賞」を受賞した話題作。著者は76年生まれの在日3世だ。高い知能も併せ持つ美女が「究極ダサい生きモン」に浴びせかける毒々しくリアリティーにあふれた悪意は、倒錯的な刺激に満ちていて、ヤバい。
    ◇
河出書房新社・1080円