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紀元前220年の世界、新しい切り口で

評者: 出口治明 / 朝⽇新聞掲載:2018年07月28日
歴史の転換期 1 B.C.220年 帝国と世界史の誕生 著者:南川 高志 出版社:山川出版社 ジャンル:歴史・地理・民俗

ISBN: 9784634445017
発売⽇: 2018/04/28
サイズ: 20cm/263,7p

B.C.220年 帝国と世界史の誕生 [編]南川高志

 最近、グローバルヒストリーという言葉がよく使われる。本書は「歴史の転換期」シリーズの初巻だ。世界史から11の西暦を取り上げ、当時の「世界」を新しい切り口で提示しようとする意欲的な試みである。
 B.C.(紀元前)221年は、始皇帝が初めて中国を統一した年である。また、前218年には第2次ポエニ戦争が始まり、ローマはヘレニズム諸王国にも触手を伸ばして「帝国」への道を歩み始める。つまり、東西で「帝国」が立ち上がったのだ。
 本書のユニークさは第3章「帝国の民となる、帝国に生きる」にある。ローマの支配下に入った地域がどのように変わったのか、イベリア半島やガリア、ブリテン島など支配される側の実態がつまびらかにされる。そして、中華帝国(秦漢)の基本パターンが形成された時期に、遊牧国家(匈奴)の基本形もまた生まれた。図表やコラムも豊富で読みやすい良書だ。