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『「誇示」する教科書』書評 「歴史修正主義」の奥に広がる闇

評者: 斎藤美奈子 / 朝⽇新聞掲載:2019年02月09日
「誇示」する教科書 歴史と道徳をめぐって 著者:佐藤 広美 出版社:新日本出版社 ジャンル:教育・学習参考書

ISBN: 9784406063319
発売⽇: 2019/01/26
サイズ: 19cm/270p

「誇示」する教科書 歴史と道徳をめぐって [著]佐藤広美

 中学校の歴史教科書が大きな議論になった時期がある。現行の歴史教科書は「自虐史観」に毒されていると主張する「新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)」が発足した1990年代の終わり頃である。
 それから約20年。教科書に対する関心が薄れゆく一方で、「自虐史観」を批判する勢力は政治家の中にも広がり、自民党議員らが推す教科書の採択率は驚異的な勢いで上がっている。
 本書はそんな現状を踏まえ、育鵬社や扶桑社の歴史教科書と公民教科書の新版および旧版、さらには道徳の教科化にともなう数社の道徳教科書を批判的に検証した労作だ。韓国併合、太平洋戦争、沖縄戦集団自決などがどう描かれているかを子細に検討。そこから浮かび上がるのは、戦前の国定教科書『国史』にも通じる、いわば「日本万歳!」な姿勢である。「歴史修正主義」の一言ですませがちな事案の奥に広がる闇。現政権の歴史観との連続性にあらためてゾッとする。