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「謎とき『風と共に去りぬ』」書評 世界的名作に隠れた真実いっぱい

評者: 諸田玲子 / 朝⽇新聞掲載:2019年02月16日
謎とき『風と共に去りぬ』 矛盾と葛藤にみちた世界文学 (新潮選書) 著者:鴻巣友季子 出版社:新潮社 ジャンル:小説研究・書き方

ISBN: 9784106038358
発売⽇: 2018/12/26
サイズ: 20cm/283p

謎とき『風と共に去りぬ』 矛盾と葛藤にみちた世界文学 [著]鴻巣友季子

 主人公のスカーレットは当初ちがう名前で書かれていた! レット・バトラーが果たしたのは母の役割? メラニーが抱える深い闇とは? 本書は恋愛小説にあらず! 次々に明らかにされる目からウロコの真実に「風と共に去りぬ」フリークの私はページを繰る手が止まらない。さすが本邦屈指の翻訳家である著者だけあって、鋭い洞察には脱帽するしかない。
 著者は言う。「なにが書かれているか」ではなく、「どう描かれているか」を検証すべきであると。映画の名場面ばかりが目に浮かぶせいか、大衆小説として安易に片づけられてしまいがちな作品を、著者は独自の目で読み直し、同時代の作家たちの作品との対比や生みの親であるミッチェルの生い立ち、彼女の書簡や生の声を丹念に拾いながらあざやかに検証してゆく。「壮大な矛盾のかたまり」であるからこそ、この世界的な名作がアメリカの断裂を描いた小説群の原点という見解に深くうなずいた。