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「変容するNHK」書評 会長の思惑や現場の証言をまじえて報告

評者: 斎藤美奈子 / 朝⽇新聞掲載:2019年04月06日
変容するNHK 「忖度」とモラル崩壊の現場 著者:川本 裕司 出版社:花伝社 ジャンル:産業

ISBN: 9784763408778
発売⽇: 2019/02/06
サイズ: 19cm/241p

変容するNHK 「忖度」とモラル崩壊の現場 [著]川本裕司

 NHKがおかしい。そんな声が強まったのは、籾井勝人氏が会長に就任した2014年頃からだ。新会長は就任会見で「政府が右というものを左といえない」と発言。百田尚樹氏ら経営委員の人選もあいまって、「報道と政権の一体化」疑惑が渦巻くなか、16年には「クローズアップ現代」のキャスターを23年務めた国谷裕子氏が降板した。
 番組への政治介入といえば、そうだよ、01年の「ETV2001 問われる戦時性暴力」である。その当時、あるいはそれ以前からのNHKの変節を、本書は歴代会長の思惑や現場の証言をまじえて追う。
 加計学園問題で食い下がる社会部記者を「君たちは倒閣運動をしているのか」と制した報道局幹部。防衛省の日報問題に関する不自然な報道。事実を伝えようとする記者と、官邸を慮ってか牽制する幹部。抑えた筆致の中に著者の静かな怒りがこもる。自己規制するNHK。せめて現場の奮闘を願わずにいられない。