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「デジタル経済と税」書評 巨大IT企業にどう税金を課すか

評者: 石川尚文 / 朝⽇新聞掲載:2019年06月08日
デジタル経済と税 AI時代の富をめぐる攻防 著者:森信茂樹 出版社:日本経済新聞出版社 ジャンル:経済

ISBN: 9784532358167
発売⽇: 2019/04/18
サイズ: 20cm/285p

デジタル経済と税 AI時代の富をめぐる攻防 [著]森信茂樹

 グーグルやアップルなど巨大IT企業にどう税金を課すか。この週末にある主要20カ国・地域の会合でも議論されるホットなテーマだ。本書はその背景と論点を手際よく整理している。
 ネット上でのサービス提供には、事務所や支店は不要だ。だから消費者の住む国に課税されることなく、国境を越えるビジネスで利益を上げられる。加えて、競争力の源が知的財産などの無形資産になったので、タックスヘイブン(租税回避地)に移すのも簡単だ。
 税逃れの防止策では、金融口座情報の交換といった国際協調も進んできた。だが、巨大IT企業の課税では、本拠地の米国と他の国の利害が対立をはらむ。
 一筋縄ではいきそうにないが、進展すれば果実は小さくない。企業や金持ちへの課税強化につきまとう海外への逃避の恐れを減らせれば、税を通じた所得の再分配の力も強まるからだ。
 本書はAI時代の格差是正にも言及しており、税をめぐる議論の射程は深い