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『「母と息子」の日本論』書評 ジェンダー構造の歪みの原因?

評者: 本田由紀 / 朝⽇新聞掲載:2020年10月24日
「母と息子」の日本論 著者:品田知美 出版社:亜紀書房 ジャンル:社会・文化

ISBN: 9784750516493
発売⽇: 2020/07/21
サイズ: 19cm/250p

「母と息子」の日本論 [著]品田知美

 この国のジェンダー構造の歪(ゆが)みは数々のデータから明らかだ。その原因が、「母と息子」の関係にあるのでは?と本書は問いかける。
 甘えさせ、かいがいしく世話を焼き、その実、息子を地位達成に駆り立てる母親。外での仕事から結婚や出産で家の中に「転職」した女性たちにとって、今度は子育てが「仕事」となる。
 成長した息子は、今度は妻に母親の代役を求める。母も妻も「かあちゃん」と呼ばれるのがその証拠。でも時に母親からの期待は呪縛と化し、息子は過酷な長時間労働から逃げることもできなくなる上に、女性嫌悪にもいたりがちだ。
 娘にとっての母親の重さは指摘されてきたが、実は息子にとっても母は重く、それが男性と女性が対等に向き合えない結果をもたらしている、と著者は説く。
 解決策は「母と子の分離」だ。独立の人格として、意思と生き方を尊重し合うこと。私は息子にそうできているだろうか、と刺さってくる本でもある。