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令和の現代に「伝説の魔女」がよみがえる! 古賀新一・山田J太「エコエコアザラクREBORN」(第120回)

 細かい設定やストーリーが原作と異なる場合、リメークではなく、リブート(再起動)と呼ぶらしい。「チャンピオンRED」(秋田書店)はこれが得意で、過去に本コラム(第81回)でも取り上げた『三つ目黙示録~悪魔王子シャラク~』は『三つ目がとおる』(手塚治虫)のリブートだった。この10月には同誌連載中の『エコエコアザラクREBORN』(古賀新一・山田J太)第1巻が発売された。

 1970年代後半に連載された『エコエコアザラク』は2018年に他界した古賀新一の代表作。公称250万部を記録した「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)黄金時代を支えた作品のひとつであり、平成に入ってから映画やテレビドラマにもなっている。中学生の黒井ミサは黒魔術で次々と人を殺す従来の少年誌に例がなかったダークヒロインだ。毎回のように人が死ぬが、たとえば文庫版(角川書店)第1巻では、全19話のうち実に14話でミサ自身が殺している。特に自分に危害を加えた相手には容赦がなく、同級生の少女を生きたまま焼却炉に投げ込むといった恐るべき残忍さを持っていた。

 中学生だった写楽が高校生になった『三つ目黙示録』と同じく、『エコエコアザラクREBORN』でもミサは高校生になっている(このあたりがリブートということだろう)。時代は令和の現代だが、服装は原作通りの黒いセーラー服。水晶球を使った占いや最後につぶやく呪文(エコエコアザラク、エコエコザメラク)も変わらない。20年前から高校生として過ごしており、外見はまったく変わらない文字通りの「美魔女」だ。首にチョーカーを巻いているのは魔女の証である「首筋のアザ」を隠すためかと思ったが、20年前はしていなかったところを見ると、何かほかの理由があるのかもしれない。第1話で登場した玄瓜(くろうり)チヒロが第5話から再登場するなど、1話完結型の原作にはなかった長編式の構成も目を引く。

 原作が往年の名作の場合、ファンはどうしても評価が厳しくなりやすい。しかし本作は実にうまく仕立ててある。絵も美しく、原作の雰囲気を残しつつ現代的にアップデートされたミサのルックスもいい。ミサが黒魔術をカンニングに使ったり、中盤から妙にコミカルなキャラクターになっていくなど70年代らしい粗さが目につく原作に比べれば、ストーリーの完成度はむしろ本作のほうが高い。古賀新一特有の土俗的なおどろおどろしさはない代わり、硬質でスタイリッシュな恐怖が描かれている。これなら平成生まれの若者はもちろん、筆者のように原作をリアルタイムで読んでいた「40年前の少年」読者も文句はないだろう。

 第1巻の最後で耳の裏に「666」のアザを持つ怪しい少年が登場するというヒキも鮮やか。考えてみれば『オーメン』もまた、原作が連載中の1976年に大ヒットした映画だった。