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「ネオウイルス学」書評 好奇心あふれる実践的解明

評者: 行方史郎 / 朝⽇新聞掲載:2021年05月08日
ネオウイルス学 (集英社新書) 著者:河岡 義裕 出版社:集英社 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784087211597
発売⽇: 2021/03/17
サイズ: 18cm/315p

「ネオウイルス学」 [編]河岡義裕

 生物の最小単位である細胞を持たないウイルスは「生物か無生物か」という古くからの論争がある。その深遠な問題はさておき、ウイルスが生命活動や生態系のなかで果たしている役割を実践的に解明しようとする試みだ。
 人のゲノムにはウイルス由来の部分があり、腸内細菌のように常に何らかのウイルスにも感染していて、病気になりにくくする働きもある。ただ、生物が進化する過程でどのように誕生したかは諸説あるようだ。
 編者は政府の新型コロナ対策にもかかわる国際的なウイルス学者。全国に散らばるチームのメンバーへのインタビューを収録した。野外調査、顕微鏡、数理モデルなど、専門や技は人それぞれでも、語る言葉は好奇心であふれている。
 人里離れた宿で行われるという合宿の様子も興味深い。「あったらいいなと思うウイルス」を生き生きと語り合う様子を想像すると、冒頭の問い掛けが無意味なものにも思えてくる。