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「方向音痴って、なおるんですか?」書評 「あるある」のすべてに激しく共感

評者: 須藤靖 / 朝⽇新聞掲載:2021年07月10日
方向音痴って、なおるんですか? 著者:吉玉サキ 出版社:交通新聞社 ジャンル:旅行・地図

ISBN: 9784330024219
発売⽇: 2021/05/21
サイズ: 19cm/190p

「方向音痴って、なおるんですか?」 [著]吉玉サキ

 私は強度の方向音痴だ。久々に妻の実家に行こうとしたが失敗し、義父に迎えに来てもらいバツの悪い思いをした。一般相対論によれば絶対座標系は存在しない。その意味でも、方向音痴こそ物理法則に支配された人間のあるべき姿なのだ(何を言っているのか自分でもよくわからない)。
 地図はくるくる回して進行方向を常に上にしないとわからない。地図があっても駅を降りた最初の一歩は勘で歩きだす。個室居酒屋でトイレから戻る際、他人の部屋に入ってしまうことがある。冒頭の「方向音痴あるある」のすべてに激しく共感し涙ぐんだ。
 グーグルマップだけで池袋のカフェに着く。紙の地図だけで曳舟の喫茶店を探す。御茶ノ水近辺を散策した後、その軌跡を地図に描く。非人道的特訓と達人の助言のおかげで、著者は方向音痴を克服できたのか。
 方向感覚に自信がある人には決してお勧めしない。でも私は方向音痴ゆえの幸せをちょっぴり味わえた。