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「PTA モヤモヤの正体」書評 変えられない組織の理由に迫る

評者: 阿古智子 / 朝⽇新聞掲載:2021年11月27日
PTAモヤモヤの正体 役員決めから会費、「親も知らない問題」まで (筑摩選書) 著者:堀内 京子 出版社:筑摩書房 ジャンル:新書・選書・ブックレット

ISBN: 9784480017369
発売⽇: 2021/09/17
サイズ: 19cm/237p

「PTA モヤモヤの正体」 [著]堀内京子

 息子の小学校でPTAの委員を経験し、これは同調圧力の強い日本社会の縮図だと痛感した。任意参加のはずなのにほぼ強制。敬遠される役員はポイント制やくじ引きで無理やり決める。形式的で非効率な会議が多く、昼間にやるから仕事を休まなければならない。小さな改革は実現したが根本的な部分は変えられなかった。期待していた教育の悩みを保護者や先生、地域の人たちと語り合う機会もほとんどなかった。
 親として悩み、記者としてPTA問題を考える人たちとつながり記された本書から、その理由が見えた。
 教科書採択の呼びかけや家庭教育、道徳教育の推進にも、政府・与党の方針に沿う形で各地のPTAとその上部団体が関わっているとみられるとの指摘には驚いた。これでは教育のあり方を活発に議論できず、多様な形態の家庭のニーズを吸い上げられないはずだ。
 私たちが主体的に生きる選択をしなければPTAも日本社会も変わらない。