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「現代日本のエリートの平等観」書評 多様な声伝わらず、格差是正に否定的

評者: 犬塚元 / 朝⽇新聞掲載:2022年04月02日
現代日本のエリートの平等観 社会的格差と政治権力 著者:竹中 佳彦 出版社:明石書店 ジャンル:社会学

ISBN: 9784750352862
発売⽇: 2021/12/27
サイズ: 21cm/278p

「現代日本のエリートの平等観」 [編]竹中佳彦、山本英弘、濱本真輔

 日本はいま平等か。もっと平等をめざすべきか。エリートの意識を調査した労作だ。野党、労働組合、マスメディアも含む、広義のエリートが調査対象だ。
 1980年の同様の調査と比べると、日本社会は経済的に不平等であるとの現状理解が増えた。女性就労に反対はなくなったが、保守エリートは依然としてさらなる男女平等に慎重だ。
 エリートの目には、だれに影響力があると映っているか。与党、官僚、経済団体の名が挙がるのは40年前と同じだが、かつて1位だったマスメディアは順位を下げた。だれと接触したかを見ると、メディアが、社会の多様な声をすくい上げる機能も弱まっている。
 他方で、主流エリートの平等観は、収入や社会的地位の高い有権者と一致し、格差是正に否定的だ。社会の多様な声が政治に伝わらない現在の政治構造を、編者は「サウンドプルーフ・プルーラリズム」と呼ぶ。防音室のように、外の声が届いていないというのだ。