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風景 [著]瀬戸内寂聴

[評者]

[掲載]2011年04月03日

[ジャンル]文芸

表紙画像


 著者の責任編集のもと刊行された雑誌「the 寂聴」で発表された7編の短編小説を収録。坂口安吾ゆかりの地で安吾のデスマスクを見やりつつ、かつて「私」が家庭を捨ててまで稚拙な恋におぼれた安吾好きの文学青年との日々を回想する「デスマスク」。妻子のいる身ながら「私」と恋に落ち、長らく居を共にした前衛作家との日々と、その関係を断ち切るため出家の手続きを淡々と進めた日々とを並行して振り返る「そういう一日」。どの短編もおそらくきわめて自伝的であり、著者88歳にして自らの道ならぬ情愛の記憶を改めて描き出したその心根とは何なのか。読み進むほどに著者に問いたくなる一冊。
 (角川学芸出版・1680円)

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