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国家は破綻する―金融危機の800年 [著]C・M・ラインハート、K・S・ロゴフ

[評者]植田和男(東京大学教授)

[掲載]2011年04月24日

[ジャンル]経済 人文

表紙画像

■「今回は特別」と破局パターン反復

 本書は過去8世紀にわたる66か国の政府債務・金融危機に関する力作である。その特徴はあらゆるソースから収集された債務、国内総生産(GDP)、インフレ率、債務不履行のタイミング等に関する膨大なデータに裏付けられた分析にある。
 表やグラフを眺めているだけでも楽しい。現在の先進国も過去には頻繁に債務不履行を経験している。14世紀にはイギリスのエドワード三世がフィレンツェの資産家からの借金を踏み倒している。フランスもスペインも何度も対外債務不履行に陥っている。国際的な資本移動が活発になった時期には、世界的に銀行危機が多発する傾向があるというグラフも意味深だ。
 本書によれば、過去のほとんどの危機には共通点がある。危機に至る過程では、政府、銀行、企業、家計のいずれかが大量の借金を抱え込む。借りたお金は何らかの投資に回るのでしばしば経済はある程度の期間好調を維持する。債務が積みあがっていることは認識されるものの、「今回ばかりは(あるいは自分たちは)特別だ」という心理が警戒心を抑え込み、一段の債務の増大とその後の破局を招く。金融危機の後には経済停滞と政府債務の膨張に帰結する。こうしたパターンが2000年代後半の米国のサブプライム危機にも観察される。
 本書は09年に執筆されたが、昨年からのヨーロッパの一部の国の危機を見事に予言した結果となった。世界に広がったサブプライム危機が経済停滞を通じて政府債務を急膨張させたのである。こうしたパターンは1980年代以降の日本にもきわめてよくあてはまる。バブル崩壊と経済停滞を経て、政府債務は第2次大戦中以来の規模に膨れ上がった。これがどうなるのかが現在のわれわれの大きな関心事である。本書によれば、高レベルの政府債務は債務不履行かインフレにつながったケースが多いというがさて。
 評・植田和男(東京大学教授・経済学)
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 村井章子訳、日経BP社・4200円/C.M.Reinhart メリーランド大教授 K.S.Rogoff ハーバード大教授。

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