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本を生み出す力―学術出版の組織アイデンティティ [著]佐藤郁哉・芳賀学・山田真茂留

[評者]辻篤子(本社論説委員)

[掲載]2011年04月24日

[ジャンル]人文

表紙画像

■「知の門衛」学術界にも課題

 出版不況は、知の守り手である学術書の出版にも影響を及ぼさずにはいない。
 本書は、東京大学出版会や有斐閣など専門書を出版する4社を例に「知の門衛」としての役割を詳細に分析し、欧米との比較も通して、「学術コミュニケーションの危機」に切り込んでいる。
 ファストフードならぬファスト新書、近年急増する教養系新書にも注目する。出版社は売れ行きが伸び悩む分、刊行点数を増やさざるを得ない。「硬い本」が出やすくなった半面、若手研究者をスポイルする懸念も指摘される。
 そんな新書ブームを支えるのは、欧米とは比較にならないほど厚みのある中間読者層だという。
 一方で、日本の学術界は、日頃から若手に書き方を指導し、仲間の仕事を評価し、知の門衛たらんとする意識が薄いとする。
 本書の分析は、日本独特の文化状況をも浮かび上がらせる。学術のありようにも示唆を与える労作である。
 辻篤子(本社論説委員)
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 新曜社・5040円

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