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英語は女を救うのか [著]北村文

[評者]斎藤環(精神科医)

[掲載]2011年05月08日

[ジャンル]人文 社会

表紙画像

■欲望がそのまま抑圧の装置に

 英語が得意になりたいという願いは、むろん女性だけのものではない。にもかかわらず、英会話教室の雑誌広告には、はっきりとジェンダー格差がある。この指摘にははっとさせられた。ビジネスのための実用性を謳(うた)う男性向けの広告に比べ、女性向けの広告はこうだ。「自分磨き」「未来への扉」そして「恋と仕事に効く」などなど。むしろ占いやパワーストーンの惹句(じゃっく)に近い。
 果たして本当に、英語は女性の「救い」たりえるのか。著者は36名の女性へのインタビューで、この問いかけを繰り返す。むろんその答えは一様ではない。しかし、最後に気づかされることがある。本書のテーマはおそらく、「英語」を「仕事」「結婚」「子ども」のいずれに置きかえても成立する。そこには欲望がそのまま抑圧の装置に転じてしまうような社会的矛盾が反映されている。それが筆者の言う「主人の道具」がもたらす「混在するめぐみ」なのだろう。
 斎藤環(精神科医)
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 筑摩書房・1575円

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