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戴季陶と近代日本 [著]張玉萍

[評者]中島岳志(北海道大学准教授・南アジア地域研究、政治思想史)

[掲載]2011年05月15日

[ジャンル]ノンフィクション・評伝 国際

表紙画像

■憧れと警戒、引き裂かれた心

 中国国民党を代表する政治家で、孫文の右腕として活躍した戴季陶(たいきとう)の生涯を活写する。
 戴は日本留学経験があり、日本語が堪能だった。そのため近代東アジア史の激流の中に身を置きながら、日本との関係に悩み続けた。
 封建政治から脱却し、近代国家への転換を図ったアジアの革命家たちにとって、日本はアンビバレントな対象だった。いち早く近代化を果たした先進的側面への憧憬(しょうけい)とともに植民地を拡大する帝国主義的側面への警戒が混在した。
 戴にとっても、日本は「第二の故郷」であり、かつ「第一の強敵」だった。この矛盾は彼の心を切り裂き、苦悩とジレンマを加速させた。
 戴の日本観は、愛着から敵意に転じ、さらに提携、対立、幻滅、非敵と二転三転した。著者は、そのプロセスを丁寧にたどり、戴の思想と行動の全体像を示す。これまでの断片的な研究を超えて、戴の生涯を描いた本書の意義は大きい。
 中島岳志(北海道大准教授)
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 法政大学出版局・5460円

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