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「帝国」の映画監督 坂根田鶴子―『開拓の花嫁』・一九四三年・満映 [著]池川玲子

[評者]上丸洋一(本社編集委員)

[掲載]2011年05月15日

[ジャンル]歴史 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■男女平等の「ユートピア」描く

 「満州国」は日本人女性を必要とした。他国の領土を完全に手中にするには、日本人を定住させて、日本民族を再生産しなければならなかったからだ。日本人女性を満州にいざなうため、1943年、映画「開拓の花嫁」が作られた。監督は日本最初の女性映画監督、坂根田鶴子(1904〜75)だった。
 坂根は、現在の黒竜江省通北に入植した埼玉県出身者の開拓団を訪れ、この映画を撮影する。シナリオに基づくプロパガンダ映画だが、移住を呼びかけるナレーションも軍歌もなかった。
 昼食の場面では夫が「疲れたべ、えれえ、頑張ったなあ」と妻に声をかけ、妻の茶わんにお茶を注ぐ。
 「愛情においても労働においても、男女の行為をバランスよく配置する坂根の姿勢は……全編を通して徹底している」と著者は分析する。
 男女平等のユートピアのような村を坂根は描いた。しかし、村人の3人に1人は、生きて日本に帰れなかった。
 上丸洋一(本社編集委員)
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 吉川弘文館・3990円

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