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自動車と建築―モータリゼーション時代の環境デザイン [著]堀田典裕

[評者]山形浩生(評論家)

[掲載]2011年05月22日

[ジャンル]人文 アート・ファッション・芸能

表紙画像

■風景一変させた、若い構想力

 戦後の急速な自動車化は、日本の社会と風景を一変させた。高速道路や給油所等の新施設が続々登場し、人間生活自体が揺らぐ。本書はこれに対する若手中堅の建築家たちの、新工法を駆使した果敢な提案群を見渡す。
 その提案は「黴菌(ばいきん)」として車を嫌悪する段階から、やがて人車共存の新たな文明像を含む壮大なものにまで発展した。その力強さは今なお感動的だ。世界共通の問題であったが故に、車との苦闘が生んだ構想力は、かれらを世界的建築家として開花させた。その活躍の場を与えた当時の官民事業者の英断にも感心。
 コンパクトな一冊ながら目配りは広く、対象は車関連施設にとどまらない。流体としての車や床面の位置づけなど、全体をまとめる概念も慧眼(けいがん)だ。隠居じみた車否定や文明批判に走らない筆致は、安易な自然への迎合を否定した本書の建築家たちの自信とも響き合い、大きな課題不在で外皮造形に拘泥しがちな現代の建築をも照射する。
 山形浩生(評論家)
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 河出ブックス・1365円

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