早見和真「砂上のファンファーレ」書評 「それが家族なんだ」と物語は叫ぶ
評者: 朝日新聞読書面
/ 朝⽇新聞掲載:2011年05月29日
砂上のファンファーレ
著者:早見 和真
出版社:幻冬舎
ジャンル:小説・文学
ISBN: 9784344019614
発売⽇:
サイズ: 20cm/252p
砂上のファンファーレ [著]早見和真
はっきりと希望を見せてくれるのも、フィクションの魅力の一つだ。映画化された『ひゃくはち』でデビューした作家が、そんな家族小説を描いた。
母は病気になった。父は借金に苦しんでいた。兄は嫁とすれ違い、弟は大学をやめる。どん底かと思った底が抜けるような苦悩の連続。ただどんな苦しみが迫り、足場が揺らいでも、壊せないものがある。「それが家族なんだ」と物語は叫んでいる。
家族それぞれのキャラクターが立ち、テンポ良く話が進む。こんなにうまくいくものか、と思いながらも、期待してしまう希望を裏切らない。人間の無力さを感じる時代だからこそ、ど真ん中、直球勝負が心地良い。(幻冬舎・1470円)