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プラハ侵攻 1968 [著]ジョセフ・クーデルカ

[評者]後藤正治(ノンフィクション作家)

[掲載]2011年06月26日

[ジャンル]歴史 国際

表紙画像

■何が起きたか雄弁に語る顔

 1968年、東欧社会主義圏のチェコで「プラハの春」が巻き起こった。スローガンは「人間の顔をした社会主義」。チェコ共産党内改革派が主導する「歴史的実験」だったが、世界的共感をもって迎えられた。夏、侵入したソ連軍が春を押しつぶす。
 本書は、侵入直後のプラハ街頭の模様を撮ったチェコ人カメラマンによる写真集だ。戦車を取り囲む人々、抗議の叫び、バリケード……チェコ流の「非暴力の抵抗」が生々しくも生き生きと収録されている。チョークで書きなぐられた「☆=ハーケンクロイツ」なる落書。すなわちソ連軍=ナチス。人々は事態をそう捉えた。
 老若男女が嘆き、憤っている。あるいは放心し、沈黙している。あるいは悲しみ、ほほ笑んでいる。千差万別なる「人間の顔」。一方、戦車に乗って自動小銃を手にした兵士たちの顔は一様に無表情である。何が起き、何が問われていたのか。顔は、雄弁過ぎるほどに語っている。
 評・後藤正治(ノンフィクション作家)
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 阿部賢一訳、平凡社・3990円

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