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「チャイナ・インパクト」書評 国が経済に過剰な影響力行使

評者: 江上剛 / 朝⽇新聞掲載:2010年12月05日
チャイナ・インパクト 著者:柴田 聡 出版社:中央公論新社 ジャンル:経済

ISBN: 9784120041631
発売⽇:
サイズ: 20cm/298p

チャイナ・インパクト [著]柴田聡 

 尖閣諸島問題で中国との関係が悪化し、中国各地で頻繁に反日デモが発生している。中国とはどういう国なのか。こういう混乱した時期だからこそ冷静に「知る」ことが必要だが、その参考になるのが本書だ。著者は在中国日本大使館の経済部参事官。中国現地からのホットなリポートになっている。
 中国がいち早くリーマン・ショックを克服できたのは「政経一体システム」という国家の経済分野への過剰なまでの影響力行使が可能なためだ。なぜ可能なのか。その理由は(1)中国共産党の圧倒的パワー(2)少人数の指導者による意思決定(3)国家介入の正当化の三つだと指摘する。
 「中国は一党独裁だから」と言われるほど単純なものではなく、あらゆる経済分野に細密にそれは張り巡らされていると、具体的な分析が加えられる。出色なのは、中国の意思決定システムが詳述されていることだ。これは今まで他の中国本ではあまり見られなかったものだ。
 百家争鳴の民主主義国である日本の政治家から見れば、うらやましい限りだが、その限界や問題点も指摘されており、バランスは保たれている。
 江上剛(作家)
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 中央公論新社・1890円