書評・最新書評

クワガタムシが語る生物多様性 [著]五箇公一 

[評者]久保文明(東京大学教授)

[掲載]2010年11月28日

[ジャンル]科学・生物

表紙画像

■地域で進化した生物の重要性

 本書ではタイトルのクワガタムシのみならず、マルハナバチやミジンコなども取り上げる。
 ヒラタクワガタの場合、現在は日本列島の島ごとに異なった亜種が存在し、全部で11の亜種が存在するという。アジア全域でみると、約500万年かけた長い進化の歴史の結果である。生態学では、独自の進化の歴史を背負った生物集団を「進化的重要単位」と呼ぶ。本書は、種だけで生物を分けるのでなく、進化の歴史とその「場」を考慮した単位で生物をとらえる必要があることを教えてくれる。
 現在、東南アジア産のヒラタクワガタは日本に大量に輸入される。日本産は独立した「進化的重要単位」だが、両者は交尾し新種を生み出す。つまり500万年の過程が人の手でわずか数年でゆがめられてしまうのだ。
 著者の訴えの中心は、自分が住む地域の生物多様性をもっと知り大事にしようということにある。各地域で独自に進化した生物の存在によって国全体、そして地球全体の生物多様性が維持されているという主張だ。
 専門的知識がなくてもわかりやすく、ユーモアを交えて説明する著者の筆力に感心した。
 評・久保文明(東大教授)
     *
 集英社・1365円
 

関連記事

ページトップへ戻る