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私の憲法体験 [著]日高六郎 

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2010年11月21日

[ジャンル]歴史 人文 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■いかに民主主義国家をつくるか

 戦後民主主義の戦後を、あるいはアメリカンデモクラシーのアメリカンをいかに取り除いて原則的な民主主義国家をつくりあげるか。それを訴えたのが本書だ。むろん著者はそのような言い方を直截(ちょくせつ)にはしていない。しかし現行憲法を守り、憲法九条の意味を正確に「きちっと読む」「判断力をもつ」「行動する」を主要な柱と考え、そのために「十五年戦争」を記憶に刻み、歴史として残し、人間としての倫理観に結びつけてこそ「第九条の世界的先駆性を語る」資格を有するとの指摘にはある世代の強烈な思いが宿っている。
 逆説的な言い方だが、「第九条を懲罰として受けとる自覚」が前提というのは至言だ。
 著者は、戦時下で海軍技術研究所の一員として「所見」を書いた。一億玉砕の否定、国策転換という知的家庭環境で得た内容だが、それが戦後体制と重なっているとの自負のもと、とくに憲法制定時の占領国アメリカと被占領国日本の相克の中に、今の私たちが守護すべき史実があると訴えている。歴史が忘却される現在にあって、羅針盤の役を果たそうという信念が各頁(ページ)から聞こえてくる。
 評・保阪正康(ノンフィクション作家)
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 筑摩書房・2520円

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