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明るい原田病日記―私の体の中で内戦が起こった [著]森まゆみ

[評者]平松洋子(エッセイスト)

[掲載]2010年11月21日

[ジャンル]医学・福祉 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■霧を晴らすようにつづる闘病記
 
 この本を手にとるまで「原田病」の病名を聞いたことがなかった。実際にかかった著者自身も知らなかった。病気などしたことがないのに三年前とつぜん視界が崩れ、頭痛、耳鳴り。検査を受けると百万人に五人しかいない自己免疫疾患「原田病」だと告げられた。さあどうする。
 自分なりの暮らしかたが身についているところへ、目の病の奇襲。なによりすきな読書なのに、夢中で読んだ翌朝、まったく目が見えなくなったりする。その恐怖は他人(ひと)ごとではない。一年半の闘病記録には不安やとまどいが率直に綴(つづ)られるのだが、みずからの心境を仔細(しさい)にすくい上げ、霧を晴らすように進む文章は、聞き書きの名手でもある著者ならではのものだ。
 闘病中に父を看(み)取(と)り、長年力を注いできた雑誌「谷根千」を終刊し、失明は逃れたものの不定愁訴を抱え、あきらかに人生の折り返し地点。おなじ場所に立つ者として、健康の重みを思い知る姿に切実さをおぼえる。
 巻末に収録された医師ふたりとの対話も興味ぶかい。「医者はいってみれば、声の商売」という眼科医が自身に向ける言葉にも、まさに目を開かされた。
 平松洋子(エッセイスト)
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 亜紀書房・1680円

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