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電子書籍の時代は本当に来るのか [著]歌田明弘 

[評者]四ノ原恒憲(朝日新聞記者)

[掲載]2010年11月07日

[ジャンル]IT・コンピューター ノンフィクション・評伝 新書

表紙画像

■見取り図の将来は

 アナログ派でいこう、と頑固に思うが、近年、喧(かまびす)しい「電子書籍」を巡る話題には、少々気が惹(ひ)かれる。身の回りの本という「物体」の山の増殖が沈静化する可能性があることもある。「本」の電子化が進めば、何か新しい「知の世界」の展望が開かれそうな気配もあるからだ。
 でも、部外者には、その進み具合の全体像と影響が、よく見えない。そんな中、長くこの問題に関心を持ち続けてきた著者による本書は、グーグル、アップル、アマゾンら米国の企業が牽引(けんいん)するこの動きに大まかな見取り図を与えてくれる。
 新刊はもとより大学図書館の所蔵本や、著作権者不明の本まで次々電子化するこの動きは、多々の問題を秘めながらも、人類の遺産である世界中の本を、居ながら検索し、読める「夢」を実現するか、に思わせる。
 日本は、まだ、この大波から逃れ、独自の対応が進みつつある。ネットの世界を覆う「英語圏」からの孤立はプラスとでるのか。また、日本での、電子本の普及は、恐らく本の再販制の崩壊につながり、中小の出版社、書店の崩壊を招きかねない……。将来観測は、悩ましい。
 四ノ原恒憲(本社編集委員)
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 ちくま新書・861円
 

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