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二人静 [著]盛田隆二 

[評者]江上剛(作家)

[掲載]2010年11月07日

[ジャンル]文芸 社会

表紙画像

■現代社会の不幸、救い込めて描く

 本の帯に「リアリズムの名手」とある。確かにすごい。小説には現代社会が抱える、不幸と言い換えてもよいかもしれない問題が、これでもかと言うほど、詰まっている。
 主人公は会社勤務しながら、認知症が進む父を一人で介護している。介護ホームで父の世話をするヘルパーの女性に恋をするのだが、彼女も一人で場面かん黙症という情緒障害の娘を育てている。この障害は人前では何も話せなくなるものだ。彼女は、DV(家庭内暴力)が原因で別れた夫からのストーカー行為にも悩まされている。
 親の介護をしながら勤務することや障害のある子どもを育てることの困難さ、制度の不備、貧困、学校のいじめ、介護施設で働く人の待遇問題などが克明に描かれている。特に認知症の進んだ人たちの汚物処理の場面などは、失礼だが、目を背けたくなるほどのリアリティーだ。
 主人公らにふりかかることは、いつでも私たちの問題になりうるし、現実に同じ問題を抱えて悩んでいる方も多いだろう。しかし、小説には暗くすさんだところがなく、明るく、救いがあるのは作者の力量だと思う。
 江上剛(作家)
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 光文社・1890円

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