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ガラスの煉獄―女刑務官あかね [著]壇上志保 

[評者]逢坂剛(作家)

[掲載]2010年10月31日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■知られざる女子刑務所の内実

 〈超大型新人、ミステリ界に降臨〉〈受刑者が密(ひそ)かに発信した暗号文〉〈県警の絡む不可解な策動〉といった帯の惹句(じゃっく)は、刑務所を舞台にしたミステリーを思わせるが、この作品はそれほど単純な小説ではない。
 北九州の女子刑務所で、作業課の刑務官を務める三上茜(あかね)は、食器や花器などのガラス製品を作る、受刑者のガラス作業の監督、指導を行っている。元刑務官という著者は、女子刑務所の組織やしきたり、部署間の協力と対立の図式、受刑者同士の複雑な確執など、一般に知られていない情報を盛り込みつつ、テンポよく話を進めていく。
 茜は、指導教官だった木島浩二、そして幼なじみの在日朝鮮人女性江崎涼と、それぞれ秘密の関係を持っている。日常の仕事とともに、茜の私生活が並行して描かれるが、話が唐突に過去にもどるため、読みにくいのが難点。木島よりも、涼と茜の愛憎半ばする関係が核になり、ガラス作業を巡る事件はむしろ従、といってよい。在日朝鮮人問題、男女関係への切り込みも少々物足りない。とはいえ、経験を踏まえた叙述には独特の粘りがあり、豊かな筆力を感じさせる。
 逢坂剛(作家)
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 新潮社・1680円

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