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死刑台から教壇へ―私が体験した韓国現代史 [著]康宗憲

[評者]四ノ原恒憲(朝日新聞記者)

[掲載]2010年10月31日

[ジャンル]歴史 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■独裁の恐ろしさ 抗う人々の勇気
 
 受験を最重要視するこの国の教育は、現代史をまともに教えない。日本史だってそう。まして、すぐお隣であっても、韓国の現代史であれば、なおさらだ。北朝鮮の独裁体制のむごさは、拉致や核問題にからめて広く知られているだろう。でも、韓国の今の自由と民主主義は、戦後長く続いた軍事独裁政権を、人々が死を含む多くの犠牲を払いながら崩して手にしたものだ、ということが、特に若い世代にどれだけ知られているだろうか。本書を一読あれ。
 在日朝鮮人2世として大阪に育った著者は、府立の高校を卒業後、ソウル大学に留学する。しかし、朴正熙大統領の独裁政権打破を目指す民主化運動のうねりの中で、1975年に、でっちあげられた北朝鮮のスパイによる事件の主犯として逮捕、死刑判決を受ける。結果13年間に及ぶ獄中生活で、時に死を覚悟した日々を中心に綴(つづ)られた文章は、末端まで思想教育が浸透した独裁権力の恐ろしさと、それに抗(あらが)う人々の勇気を伝える。
 減刑、仮釈放で帰国後、今大学の教壇に立つ著者が訴える南北朝鮮平和統一への思いは、過酷な体験に裏打ちされ、重い。
 四ノ原恒憲(本社編集委員)
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 角川学芸出版・1785円

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