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ルポ 生活保護―貧困をなくす新たな取り組み [著]本田良一著 

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2010年10月24日

[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝 新書

表紙画像

■釧路の多様な支援策など報告

 北海道釧路市は生活保護率が全国でも最上位に近い。この地に身を置く新聞記者が、自らの目に映る光景をもとに、日本の生活保護の実態と社会保障制度の現実をあぶりだしたのが本書だ。生活保護法は制定されて以来60年間、一度も抜本改正されていないだけに多くの矛盾を抱えていることが前提にある。
 生活保護への偏見、自治体にさえそれがある。受給の申請を抑えるノルマがあったり、申請をさせない水際作戦という語まである。財政上の負担抑制に自治体も必死なのだろう。釧路市の場合は地元産業の不況などで発想を改め、生活保護を前向きに捉(とら)えて、社会再生の投資、その理念のもと人間回復の自立支援プログラムをつくりあげている。自立により、「保護から抜ける」方向を目ざしている。
 貧困の連鎖、再生産を防ぐために、民間グループの生活保護家庭受験生への教育支援も根づいている。生活保護が真にセーフティーネットになるためにどのような政策、行政の姿勢が必要か、貧困ゆえに起こる児童虐待、孤老死など本書の行間から漏れる著者の問いを社会的連帯という耳で聞く必要がある。
 保阪正康(ノンフィクション作家)
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 中公新書・819円

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