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捕物帖の百年-歴史の光と影 [著]野崎六助 

[評者]四ノ原恒憲(朝日新聞記者)

[掲載]2010年09月19日

[ジャンル]文芸 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■「半七」以来の大山脈に分け入る

 難解な本に疲れた時、本棚の捕物帖(ちょう)の一冊に、ふと手が伸びることがある。江戸の季節感や風物、人情があふれる市井の中で、おなじみのヒーローが事件の謎を必ず解いてくれる。その自足した世界の安心感にゆったりと浸りたいがために。
 そんな、日本独自の探偵小説、捕物帖の定型を作った岡本綺堂の「半七捕物帳」が発表されてから100年近くになる。江戸川乱歩登場の数年前というから、その先見性に驚く。以降、「半七」を含め三大捕物帖とされる「右門捕物帖」「銭形平次捕物控」など、膨大な数の「捕物帖」が書かれてきた。
 それらは、「半七」を超えたのか。著者はその大山脈に分け入り、歴史をたどりながら、「時代小説の変種・ならびに探偵小説の亜流」と扱われがちな「捕物帖」を、「純正な探偵小説」として救い出そうとする。
 何故、横溝正史は戦前、「捕物帖」を書くのか。何故、戦後すぐ「捕物帖」の最盛期が訪れるか。何故、山本周五郎は「捕物帖」を書かなかったのか。何故、山田風太郎の「警視庁草紙」が革命的なのか。何故……。答えは本書にある。
 四ノ原恒憲(本社編集委員)
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 彩流社・2100円

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