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ドキュメント ひきこもり-「長期化」と「高年齢化」の実態 [著]池上正樹

[評者]斎藤環(精神科医)

[掲載]2010年09月12日

[ジャンル]社会 ノンフィクション・評伝 新書

表紙画像

■高齢化する「ひきこもり」の現状

 マスコミに「ひきこもり」という言葉が普及して約10年。著者はその最初期から、当事者や支援者などの現場で取材を続けてきたジャーナリストだ。さきごろ内閣府は、ひきこもり人口を推定70万人と発表したが、もはや問題は数だけではない。
 著者が警鐘を鳴らすのは、長期化し高年齢化しつつある当事者たちの現状である。本書で紹介されるのも、30代や40代の事例が中心だ。背景にあるのは、抜け出せずに長期化した事例や、職場不適応からはじまる「社会人ひきこもり」事例の増加である。最近の研究では、他の精神障害との合併が多いこと、発達障害との関連も少なくないことなどがわかってきた。
 本書の後半では、さまざまな支援活動が紹介される。新潟の中垣内医師による「ひきこもり外来」の試み。政府にも積極的に働きかける家族会「全国ひきこもりKHJ親の会」の活動。とりわけ注目されるのは、80%以上の高い復帰率を誇る和歌山大学「ひきこもり回復支援プログラム」の試みだ。そう、ひきこもり支援に遅すぎるということはない。本書には、そんな「希望」もこめられている。
 斎藤環(精神科医)
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 宝島社新書・700円

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