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ニッポンの風景をつくりなおせ [著]梅原真/おまんのモノサシ持ちや [著]篠原匡

[評者]平松洋子(エッセイスト)

[掲載]2010年08月22日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能 ノンフィクション・評伝

表紙画像

■直球勝負、いごっそうデザイナー

 でたっ。それも同時に二冊!
 わたしはぴょんぴょん跳ねて駆け回りたかった。梅原真はそういうキモチにさせる男です。
 一冊はデザインの作品集、もう一冊は仕事の流儀の解説。その副題に「土佐の反骨デザイナー」とある。頑固で武骨、生まれついての「いごっそう」なのに、愛嬌(あいきょう)があって繊細で。
 長いあいだ、高知県外の仕事は引き受けなかった。手がけるのは農林漁業、つまり一次産業と地域にかかわるものだけ。デザインのちからで経済を掘り起こし、地域や企業を活性化させる——これが、流儀をずどーんと貫いてきた一本柱だ。
 このひとが関(かか)わると、土地の風景や産物がきらきら輝きだす。「石ころも宝の山にできるがよ!」。こけおどかしではない。黒潮町の浜を「砂浜美術館」と名づけて全国に知らしめた。ロゴやパッケージ、商品コンセプトまで手がけた馬路村「ぽん酢しょうゆ ゆずの村」、隠岐島海士町「島じゃ常識 さざえカレー」、「四万十川の青のり」……みな破竹の勢いに育てた。「ゆずの村」をブランドにした馬路村農協は、いまや年商三十八億円を稼ぐ高知の星。八〇年代「なんでわざわざ『村』なんよ?」と、地元じゅうが商品名に失望したのに、断固譲らなかったのも梅原真だ。
 ひねるのはしゃらくさい。「土佐 一本釣り藁(わら)焼きたたき」に添えたコピーは「漁師が釣って、漁師が焼いた」。つねに直球勝負。商品じたいをメッセージにする技が効いている。なにより、おいしそう。
 外ばっかり気にしてほかを追いかけるのはあかんやろう。自分の足もとに価値あるエエもんがあるやろう。アカンヤンカマン((C)大橋歩)は、故郷高知への愛情と苛(いら)立ちを武器に「あかんやんか」と吠(ほ)えつづけてきた。
 いま吠えているのは「84(はちよん)プロジェクト」。製造品出荷額四十七番めのビリッケツでも、高知の森林率は日本一だ。
「高知のアイデンティティは龍馬じゃないろ。84%の森林やろ」
 梅原真はニッポンの風景をデザインのちからで再生する、まっことの男じゃき。
 評・平松洋子(エッセイスト)
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 『ニッポン〜』羽鳥書店・2730円/うめばら・まこと▽『おまん〜』日経新聞出版・1680円/しのはら・ただし

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