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4千万本の木を植えた男が残す言葉 [著]宮脇昭著 

[評者]江上剛(作家)

[掲載]2010年08月22日

[ジャンル]社会

表紙画像


■鎮守の森こそ日本の森の原点

 森を再生しなければ人類の未来はない、みんなで木を植えようという著者の本気のメッセージを読み取ったら、本書を紹介せざるを得ない。
 著者は岡山県に生まれ、地元の農林学校からスタートして苦学を重ねた。志したのは雑草生態学。農家を雑草取りの苦労から解放したいと思ったのだ。「一生日の目を見ない学問」。しかし、それが著者の道を開いた。植物社会学の権威チュクセン教授から招かれ、ドイツ留学。彼の下で現場重視の学問姿勢を徹底して学んだ。
 帰国した著者は、鎮守の森こそ日本の森の原点ではないかと考え、森の再建に乗り出す。著者の愚直な姿勢は大企業を動かし、森づくりの理解者が増えていく。その輪は世界に広がり、4千万本の木を植えた男と言われるまでになった。
 本書によれば日本人の92・8%が住む照葉樹林域に本物の森は0・06%しかない。だが1平方メートルあれば森が出来る。本書を読むとマンションの植え込みに森を作りたくなるだろう。それは植物の多様性を学ぶ教材で、人間も多様性が重要であるとの著者の指摘に耳を傾けることにもなる。
 評・江上剛(作家)
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河出書房新社・1575円

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