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ホワイトハウス・フェロー [著]チャールズ・P・ガルシア

[評者]久保文明(東京大学教授)

[掲載]2010年08月08日

[ジャンル]政治 国際

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■層の厚いアメリカ流人材育成


 1965年、15人のホワイトハウス・フェロー第1期生が大統領執務室でジョンソン大統領と対面した。優秀な若者に1年間、政府最上層部での経験を積ませるために、とりわけ高官と直接接触する機会を与えるために、ジョンソン自らが立ち上げた制度であった。この制度はこんにちまで続いている。
 当初は21歳から31歳までの大卒者であった。途中から年齢制限ははずされたが、若い世代を念頭においていることは間違いない。連邦公務員は軍人を除いて資格がない。応募者は毎年何千人にも上るが、採用されるのは20人前後に過ぎない。フェローに採用されることは若者にとってまさに勲章である。
 フェローは閣僚の近くで重要な職務を任される。大統領と2人で一杯やる機会に恵まれたフェローもいる。コリン・パウエル、ロバート・マクファーレン、ドリス・カーンズ・グッドウィン、イレーン・チャオなども元フェローである。アメリカ流の人材形成の一つの方法といえよう。
 フェローが直接仕えた指導者たちは、概して優れた資質をもっていた。アメリカ社会での人材の豊富さ、質の高さ、および層の厚さを示唆している。日本で真似(まね)できるかどうかは即断しかねるが、類似の制度を創設してもよいであろう。ただし、最高指導者たちのそのままの姿を見せた結果、フェローたちが幻滅してしまうということがあってはならない。
 元フェローの一人はその経験を踏まえて、指導者のあり方について、以下のように語る。多くの仕事を任せ、うまくいけば手柄をもたせ、そうでないときには味方になってくれる。「そういうポジティヴな上司の下で働くのがいかに素晴らしいことかを実感した」。「リーダーの役割は、若い人を元気づけ、やる気をもたせ、責務を果たすために最大限能力を発揮できるようにすること」。フェロー時代に学んだことの中で、この点が最も重要な教訓であった。
 日本政府の最高指導者たちはこのような指導力を発揮しているであろうか。
 評・久保文明(東京大学教授・アメリカ政治)
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 池村千秋訳、ダイヤモンド社・1890円/Charles P. Garcia 実業家、元ホワイトハウス・フェロー。

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