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笑いのこころ ユーモアのセンス [著]織田正吉

[評者]四ノ原恒憲(朝日新聞記者)

[掲載]2010年08月01日

[ジャンル]人文 アート・ファッション・芸能

表紙画像

■哲学+心理学+豊富な実例

 悲劇より喜劇を演じる方が難しいらしい。同様、文章でも、笑いを論じ、笑いを誘うことの方が、やっかいな気がする。
 思うに、「笑い」は、人間の本質に迫る、複雑な現象で、かつてベルクソンら多くの哲学者が正面から扱っているが、素人には、とても難解、かつ笑えない。また「ギャグ」「ユーモア」を、活字化すると、「間」「表情」など、時に言葉より強く「笑い」を誘う要素が死んでしまうからなのでしょうか。
 その点、演芸作家として長く笑いの現場に立ち、笑いの本質を考え続けてきた筆者による本書は、哲学や心理学といった「お勉強」と、現場感覚がうまく溶け合い、誠に程がいい。
 「パラドックス」「詭弁(きべん)」「ナンセンス」といった数々のキーワードの解説に、その実例として落語の一節、映画でのギャグ、小説の一場面など豊富な引用が添えられる。いとし・こいし、ダイマル・ラケットの懐かしき漫才も登場しますよ。
 笑いとユーモアは「緊張を解き心のバランスを保つための調節機能」が結論。なるほど。でも、この書評には、ユーモアが足りないよねえ、我ながら。
 四ノ原恒憲(本社編集委員)
   *
 岩波書店・2100円

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