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禅問答入門 [著]石井清純 

[評者]田中貴子(甲南大学教授)

[掲載]2010年07月04日

[ジャンル]文芸 人文

表紙画像

■模範解答というものはない

 「禅問答」といえば、難解なことのたとえとして知られる。藤原定家の技巧に富んだ和歌を揶揄(やゆ)して「達磨(だるま)歌」と称したのが古い例だ。ちなみに、「達磨」とは禅宗の一派の祖師である。
 確かに、「絶対的真理とは何ぞや?」と問うて「目玉いっぱいの埃(ほこり)だ」と答えられても、何のことかさっぱりわからない。しかし、凡人だからわからないのかというと、そうではない。禅問答には模範解答というものがないからなのである。
 本書は代表的な禅問答を原文と書き下し文で示し、それに平明な解説を施した、その名の通りの入門書である。「です・ます」体の語り口はやさしく、本の構成はまるで教科書を思わせる。読み進めるにつれ、読者は「禅問答は難しい」という先入観を取り払ってゆくだろう。
 だが、本書を読めば禅問答がすべて理解できるというのではない。むしろ、禅問答の深さや広がりをよけいに知ることになるといえよう。わかったような気持ちに安住しないことこそが禅問答という禅の修行観だ、と著者が述べる通りである。
 どんな道も最初の一歩が肝心。若葉マークの人にお薦めだ。
 田中貴子(甲南大学教授)
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 角川選書・1575円

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