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六〇年安保 メディアにあらわれたイメージ闘争 [著]大井浩一

[評者]保阪正康(ノンフィクション作家)

[掲載]2010年06月27日

[ジャンル]歴史 社会

表紙画像

■史実から次代の暴力を読み取る

 六〇年安保を歴史の中に位置づけるとどうなるのか。安保世代には興味のあるテーマだ。著者は一九六二年生まれというから、皮膚感覚を離れてその位置づけを試みる資格を有している。一読して安堵(あんど)感を覚えた。
 きわめて正統的に実証を心がけている。六〇年安保の始まりはいつか、当時の学生運動の本質は何か、デモの実態はどうだったか、岸首相の発言はどう報じられたか、新聞を始めメディアの伝えるその情報の量と質が歴史の中にあるイメージを残しているが、著者は、それが果たして実像に即しているかを確かめたかったのである。たとえば新聞が報じたデモと野球観戦を対比する「現代学生二態」の写真の通弊的な解釈に「両者を別物と考えるのは、正鵠(せいこく)を射ていない」との指摘など安堵感を与える表現が多い。
 著者の史実を拾いあげていく姿勢と、あえてあの運動に審判を下そうとしないことが本書の強みである。同時にこの運動の背景に次代の暴力を読みとっている結論こそ、歴史を複眼で見る著者の真摯(しんし)さであろう。人を得てやっと六〇年安保は実像となったとの感がしてくる。
 保阪正康(ノンフィクション作家)
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 勁草書房・3360円

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