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ケインズ説得論集 [著]J・M・ケインズ 

[評者]江上剛(作家)

[掲載]2010年06月06日

[ジャンル]経済 国際

表紙画像

■時代を超えても変わらぬ本質

 サブプライムローン問題から始まってリーマン・ショック、そして最近のギリシャ財政破綻(はたん)に至るまで、悲観論に傾きがちの私たち日本人は、将来が心配でたまらない。そのせいか時事問題を易しく解説するテレビ番組や解説本がヒットを飛ばしている。これは日本の置かれている経済、財政状況について正確に理解したいという人が急増してきたためだろう。そんな人のために最適な本が出た。この『ケインズ説得論集』だ。
 ケインズといえば、20世紀初めの世界大恐慌からの経済復興をリードした経済学者だ。当時も金融恐慌に端を発し、世界は強烈なデフレに襲われ、失業者があふれた。ケインズは、政府が積極的に関与する財政発動によって経済復興すべきだと説いた。現在と状況はそっくりだ。
 ケインズなんか難しそう、解説本の方がいいとおっしゃる諸氏も多いだろう。かく言う私も学生時代にはケインズ本を枕に惰眠をむさぼった口だ。
 しかし、本書は時事論集だ。デフレ不況の真っただ中で雑誌に書かれたもので読みやすいし、分かりやすい。しかも、不思議なことにまったく古臭くない。まるで最近発刊された雑誌上で、ケインズが不勉強な私に現在の状況を懇切丁寧に解説してくれているような錯覚さえ覚えるほどだ。当時に比べて現在ははるかにグローバル化、複雑化しているが、問題の本質は変わらないからだろう。
 「ものを買えば雇用が増えます。もっとも、イギリス製の商品を買わなければなりません。国内の雇用を増やすには、国内で生産された商品を買わねばなりません。(中略)国を愛する主婦の皆さんにお願いします。あすの朝早く、町に行き、あちこちで宣伝している大売り出しの店に入ってください。素晴らしい買い物になります」
 イギリスを日本に変えて欲しい。日本製を買わなければ国内総生産(GDP)は増えない。GDPが増えなければ、財政再建は不可能だ。子ども手当を配る民主党の本音の一端を、ケインズが代弁しているかのようではないか。
 評・江上剛(作家)
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 山岡洋一訳、日本経済新聞出版社・1995円/J.M.Keynes 1883〜1946年。英国生まれ。

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