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バンド臨終図巻 [著]速水健朗ほか

[評者]斎藤環(精神科医)

[掲載]2010年05月30日

[ジャンル]アート・ファッション・芸能

表紙画像

■死のように必然的な関係性の末路

 「散開」「凍結」「撤収」……バンド解散は様々に呼ばれる。栄華を極めたバンドも、いずれ終わりを迎える。当事者にとっては不幸だが、バンドの生態を知る上で「成功」より「解散」に照準したのは正解だった。
 タイトルは山田風太郎の名著『人間臨終図鑑』由来とのことだが、少しでも音楽好きの30〜40代の人間にとっては「本家」以上の面白さ。「ビートルズ」から「羞恥(しゅうち)心」まで、解散の意外な真相はもちろん、「まだ解散していなかったのか!」といった“発見”も楽しめる。
 バンドとは不思議な生命体だ。幼馴染(なじ)みや気の合う仲間がはじめた演奏が、魔法のようなケミストリーとともに素晴らしい楽曲を生み出していく。バンドの蜜月期間だ。やがて「倦怠(けんたい)期」となり「仮面夫婦」になるにつれ、魔法は醒(さ)めていく。
 バンドの結成は偶然にすぎないが、解散は常に必然だという。そう、生が偶然であり死が必然であるように。興味深いのは、まさにその「必然」のメカニズムなのだ。創造と破壊をもたらした200通りの「関係性」を知れば、あの名曲の風景も、ちょっと変わって見えるかもしれない。
 斎藤環(精神科医)
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 河出書房新社・2520円

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