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マデックの罠 [著]ロブ・ホワイト 

[評者]逢坂剛(作家)

[掲載]2010年05月16日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■生き残りかけた砂漠の攻防

 本書は20年ほど前、1度翻訳されたことのある旧作だが、このほど改訳新版として復刊された。1973年度の、MWA(アメリカ探偵作家クラブ)のエドガー・アラン・ポー賞を受賞している。
 もともとは、少年向けに書かれた小説だから、活字の大きさも訳文も読みやすい。とはいえ、おとなが読んでも十分に楽しめる冒険小説の佳作である。昨今のこってりした翻訳小説に食傷している向きには、一服の清涼剤になるだろう。
 狩猟ガイドの若者ベンが、ある事情からハンターのマデックに狙われ、生き残りをかけて砂漠の中をただ一人、逃げ回るはめになる。物語が進行するにつれ、あの手この手と繰り出される攻防の趣向は、サバイバル小説の本道を行くものだ。ベンが持てる知力と体力を振り絞り、必死に生き延びようとする姿は感動的ですらある。一件落着したと思われたあとに、もう一つ罠が仕掛けられているなど、ストーリーテリングのうまさは抜群で、最後まで飽きさせない。
 こうした本を、子供のころに読ませておけば、きっと本好きのおとなに育つに違いない。
 評・逢坂剛(作家)
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 宮下嶺夫訳、評論社・1575円

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