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大仏男 [著]原宏一

[評者]江上剛(作家)

[掲載]2010年04月18日

[ジャンル]文芸

表紙画像

■偽霊能者のだましのテクニック

 原宏一は読むたびに面白くなる。『トイレのポツポツ』も良かった。お陰でトイレを汚さないように、座って小用を足すはめになってしまった。
 今度は偽霊能者だ。売れないお笑い芸人コンビのカナ&タクロウは、タクロウの大仏顔を活用して霊能者ネタにチャレンジする。しかし、お笑いとしては失敗。それならば、いっそ霊能者になってしまえと安直な人生の選択に踏み切った。そこへ偽と知りつつ、だまされたふりをして悪人たちが近づき、ひともうけをたくらむ。彼らのプロデュースでタクロウは、あれよあれよという間に国家を揺るがすほどの大霊能者になってしまう。カナは大喜びするが、果たしてその結末は?
 この小説は、スピリチュアルブームを皮肉っているだけではない。教育問題を論じ、官僚を批判し、偽霊能者のだましのテクニックやキャバクラ嬢の裏話を暴露する社会派の顔も持っている。しかも庶民的で、温かく包み込む優しさにあふれており、さわやかな読後感は、読者の心を癒やしてくれるだろう。悩める者よ、偽霊能者に相談するくらいなら原宏一の小説を読め!
 江上剛(作家)
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 実業之日本社・1575円

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