「コーポレート・ガバナンス」書評 リスクを取らない日本の経営者
評者: 江上剛
/ 朝⽇新聞掲載:2010年03月21日
コーポレート・ガバナンス 経営者の交代と報酬はどうあるべきか
著者:久保 克行
出版社:日本経済新聞出版社
ジャンル:経営・ビジネス
ISBN: 9784532314989
発売⽇:
サイズ: 20cm/287p
コーポレート・ガバナンス―経営者の交代と報酬はどうあるべきか [著]久保克行
「コーポレート・ガバナンス」という言葉をよく聞くようになった。日本語に直せば企業統治。なんともこなれない感じがするが、要するに「企業のあり方」を問うものだ。
著者は、世界経済危機のきっかけになったアメリカの大手金融機関の破綻(はたん)が、アメリカ型のコーポレート・ガバナンスの失敗にあると考えた。アメリカ型は日本企業のモデルになるのか、良いコーポレート・ガバナンスとは何かを具体的な数値データに基づいて追求していく。理論や制度解説のみの類似本と一線を画しているため、気持ちが良いくらいに説得力がある。
例えば表題にある経営者交代に関して言うと、企業にとっては業績の悪い経営者が交代し、業績の良い経営者が存在し続けることが望ましいのだが、ほとんどの日本企業にその仕組みは存在しないと結論付ける。また経営者にも業績を向上させようとする適切なインセンティブが働いていないという。
すなわちリスクを取らない、「無事これ名馬」で過ごす経営者が多いということだ。韓国企業のV字回復を横目に、日本企業の低迷が目立つ原因が理解できた。
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日本経済新聞出版社・2520円