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アフリカを食い荒らす中国 [著]セルジュ・ミッシェル、ミッシェル・ブーレ

[評者]松本仁一(ジャーナリスト)

[掲載]2010年03月07日

[ジャンル]政治 経済 国際

表紙画像


■利益のためには手段選ばぬエグさ

 ちょっと刺激的なタイトルだが、西欧の大手紙記者が時間をかけてアフリカ各地を取材したリポートだ。その具体的な報告には説得力がある。
 たとえばナイジェリアのラゴス。世界最悪といわれる交通渋滞都市だ。建設会社を経営する中国人は、自分でパトカーを運転し、サイレンを鳴らして路肩を走り抜ける。警察幹部の便宜を図ってやり、その見返りにパトカーを手に入れたのだ。
 コンゴ共和国。1万戸の住宅建設事業を受注した中国企業は、担当大臣の大邸宅を無償で建ててやっている。
 権力者に直接利益を提供するというやり方で、中国は鉄道、大規模ダム、石油開発などのプロジェクトを次々と手に入れ、資源を持つアフリカのほとんどの国に進出を果たした。
 コンゴ共和国では、絶滅危惧(きぐ)種のビリンガの巨木を大量に切り倒して持ちだす例が報告される。ザンビアでは銅。スーダンやアンゴラでは石油。そればかりか農地まで買収しはじめている。
 その一方で、低価格の中国製品がアフリカに持ちこまれる。競争力の弱いアフリカ地場産業はたちまち駆逐されてしまう。今やアフリカの中国人は75万人とも100万人ともいわれるほどにふくれ上がった。
 中国がそれほどの勢いで進出できるのは、アフリカの国家の「上に立つ人物に問題がある」からだ、と著者は指摘する。中国とつきあうことで個人的に利益を得られるなら、自国の産業などどうなってもいい——。指導者の多くが、そう考えるような状態があるのだという。
 ギニアの外務大臣は著者に、中国とアフリカの「ウィン・ウィンの関係が大切だ」と語る。双方ともに利益を得る、という意味だ。しかしそのウィン・ウィン関係は「中国とアフリカ」ではない。「中国とアフリカの政府幹部」なのだ。アフリカの人びとの存在など、双方の眼中にない。
 本書に現れる中国の存在感は圧倒的だ。利益のためには手段を選ばないたくましさ、強引さ。それは同時に、かなりのエグさを伴うのである。
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 中平信也訳、河出書房新社・2520円/Serge Michel 仏の記者。Michel Beuret スイスの記者。

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