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評伝バラク・オバマ―「越境」する大統領 [著]渡辺将人

[評者]久保文明(東京大学教授)

[掲載]2010年02月14日

[ジャンル]政治 ノンフィクション・評伝 国際

表紙画像


■人生初期からオバマ像を探る労作

 オバマの恩師は「人生初期の経験が、彼の判断力に深い影響を与えています」と語る。本書はこの言葉に依拠してオバマを解明しようとした伝記である。
 オバマはハワイ、インドネシア、ロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴ、ボストンに生きた。著者によれば、オバマが特別なのも、ケニア人とアメリカ人の間に生まれたことではなく、このような国際的環境で交流を築いてきたことである。しかもオバマは帰国子女、ハパ(ハーフを意味するハワイ語)、詩人、オーガナイザー、大学教員として生きてきた。太平洋とアジアから出発し、アメリカの中心にまで「越境」したのだ。
 ある時期、オバマの夢は、物書きになることだった。最初の著書『マイ・ドリーム』は宣伝のための政治家の自伝ではなく、自らの青年期を素材にした文芸作品である。「文学者がのちに政治家も兼ねるようになった」のである。
 皮相的な「オバマ論」が溢(あふ)れている。だが本書は夥(おびただ)しい数の関係者への聞き取り調査に基づいた驚くべき労作である。アメリカでもここまで掘り下げたオバマ伝記は存在しないであろう。
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 集英社・2200円

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