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「農」と「食」の農商工連携―中山間地域の先端モデル・岩手県の現場から [著]関満博

[評者]南塚信吾(法政大学教授)

[掲載]2010年02月14日

[ジャンル]社会

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■地域愛が生み出す力と希望

 岩手県の農村女性の活躍が、地域に大きな「希望」を与えている。われわれは、地方は過疎化し停滞していると思いがちである。しかし、1980年代以後、グローバリゼーションの中にあって、地方では逆に、人々が創意を発揮して新しい生き方をつくり出しつつあるのだ。
 本書は、岩手県の中山間地域で農村住民が繰り広げる「地産地消」の運動を多数調査紹介している。多くは農村女性の主導で始まった運動であるが、地元の農産物を材料に「農産物直売所」「農村レストラン」「農産物加工場」という3点セットによる新しい「農商工連携」が進んでいる。そば、雑穀、大豆、シイタケ、ワラビ、カタクリなど、地元の産物が大活躍している。
 大量生産、大量消費の時代に代わってやってきた、心のこもった良質で安全な品が求められる時代の表れだと本書は言う。自治体や農協もからめつつ、住民自身の大きな発意が生きている。人口減少、高齢化にもかかわらず、「地域に深い愛情」を持つ住民の発意と力で新しい事業を育てる中山間地域。岩手県のみならず、「農」の確実な力を感じる。
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 新評論・3675円

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